ご指名ありがとうございます。ティア(TIA)創業者の冨安徳久でございます。
「人生で一番大事なことは何か」。
この、人間にとって最も根源的であり、かつ最も重たい問いかけを私に向けてくださり、身が引き締まる思いです。私は葬儀という仕事を通じて、何万人、何十万人という方々の「人生の最期」に立ち会わせていただきました。その経験、そして私自身の波乱万丈な人生から導き出した答えを、心を込めてお話しさせていただきます。
少し長くなりますが、私の魂の授業だと思って、どうか最後までお付き合いください。
第一章:死から生を逆算する
私が人生で一番大事だと確信していること。それは一言で言えば**「感謝」**です。しかし、ただ単に「ありがとうと言いましょう」という道徳的な話ではありません。私が語る感謝は、死という厳粛な事実から導き出された、生きるための「戦略」であり、宇宙の「法則」なのです。
私たちは皆、必ず死にます。これは100%の確率で決まっている未来です。しかし、多くの人は普段、自分が死ぬということを忘れて生きています。まるで自分だけは永遠に生きるかのように、時間を浪費し、些細なことで腹を立て、大切な人を傷つけてしまったりする。
私は葬儀の現場で、たくさんの「後悔」を見てきました。「もっと優しくすればよかった」「もっとありがとうと言えばよかった」「あんな喧嘩をしなければよかった」。棺の前で涙を流し、取り返しのつかない時間を嘆くご遺族の姿を、数え切れないほど見てきました。
人生で一番大事なことは、**「終わりを意識して、今を生きる」**ことです。
明日、目が覚めないかもしれません。今日出かけた家族が、二度と帰ってこないかもしれません。それが命の現実です。もし、今日が人生最後の日だとしたら、あなたは今の生き方を選びますか? 今、目の前にいる人に、その言葉を投げかけますか?
「死」をタブー視せず、直視すること。そして、「自分の人生の幕が下りる時、誰に、どんな言葉をかけてもらいたいか」を真剣に考えること。そこからしか、本当の意味での充実した人生は始まりません。
私の答えは明確です。人生の最期に、たくさんの人から「あなたに出会えてよかった」「ありがとう」と言ってもらえる人生を送ること。これ以上の成功はありません。お金をいくら残しても、地位や名誉を得ても、あの世には持っていけません。持っていけるのは、魂に刻まれた「思い出」と、どれだけ愛し、愛されたかという「記憶」だけなのです。
第二章:「当たり前」の対義語を知っていますか?
では、どうすれば最期に「ありがとう」と言われる人生を送れるのでしょうか。それは、あなた自身が生きている間に、どれだけの「ありがとう」を発信できたかにかかっています。
皆さんは、「ありがとう」の反対語をご存知でしょうか?
それは「当たり前」です。
朝、目が覚めること。ご飯が食べられること。手足が動くこと。仕事があること。家族がいること。これらを「当たり前」だと思った瞬間、私たちの心から感謝は消え失せ、代わりに「不満」が生まれます。「なぜもっと給料が上がらないんだ」「なぜ妻は(夫は)わかってくれないんだ」「なぜ自分ばかりこんな目に遭うんだ」。
不満は、人生を腐らせる毒です。
私は若い頃、本当にどうしようもない人間でした。借金を抱え、病気をし、人生のどん底を味わいました。その頃の私は、すべてを周りのせいにしていました。世の中が悪い、親が悪い、運が悪い。そうやって毒を吐き散らしていたから、さらに悪い状況を引き寄せていたのです。
しかし、ある時気づいたのです。「当たり前」のことなど、何一つないのだと。
心臓が動いているのは、自分の意志ではありません。誰かが動かしてくれているのです。今日食べるお米を作ってくれた人がいる。着ている服を縫ってくれた人がいる。私たちは、無数の誰かのおかげで、生かされているのです。
「当たり前」を「有り難し(ありがたい)」に変えること。これが人生を劇的に変える魔法です。
どんなに辛い状況でも、探せば必ず感謝の種はあります。借金があっても、命までは取られていない。病気になっても、支えてくれる家族がいる、あるいは医療スタッフがいる。上司に怒られても、それは自分を成長させるための試練かもしれない。
起きる出来事すべてを「肯定」し、「ありがとう」と言ってみる。たとえ心が伴っていなくてもいいんです。言葉が先、心は後です。「ありがとう」と口に出すと、脳は「ありがとうと言いたくなる理由」を探し始めます。すると、景色が変わるのです。地獄だと思っていた場所が、実は学びの場であり、感謝すべき道場であったことに気づくのです。
第三章:すべては「必然・必要・ベスト」
私の人生哲学において、非常に重要なキーワードがあります。それは、**「起きたことはすべて、必然・必要・ベストである」**という考え方です。
人生には、理不尽なことや悲しいことが必ず起こります。大切な人との別れ、事業の失敗、予期せぬトラブル。その渦中にいる時は、「なぜ神様はこんな試練を与えるのか」と天を呪いたくなるでしょう。
しかし、長い目で見れば、その苦難こそが、後の自分を作るために必要不可欠なピースだったと気づく日が必ず来ます。
私はかつて、大学受験に失敗し、アルバイト生活を余儀なくされました。当時は挫折感でいっぱいでしたが、そのアルバイト先が葬儀社だったのです。もし私が大学に合格していたら、今の私は存在しません。あの挫折があったからこそ、天職に出会えたのです。
また、創業当時に味わった数々の裏切りや資金繰りの苦労も、すべて今の経営哲学を作るための肥やしとなりました。あれがなければ、私は人の痛みがわからない、傲慢な経営者になっていたかもしれません。
人生において、「無駄なこと」は何一つありません。成功も失敗も、喜びも悲しみも、すべてはあなたの魂を磨くための砥石(といし)です。
今、もしあなたが苦しい状況にあるなら、こう思ってください。「この出来事は、将来の自分にどんなギフトをくれようとしているのだろうか?」と。そして、歯を食いしばりながらでもいいから、「この試練をくれて、ありがとう」と言ってみてください。
運命を呪うのではなく、運命を愛する。ニーチェの言う「運命愛」に近いかもしれません。自分の人生に起きるすべてを丸ごと受け入れ、肯定する強さを持つこと。それが、揺るぎない幸福感を手に入れる鍵です。
第四章:人を喜ばせることが、最高の喜び
感謝の心を持ち、自分の運命を肯定できるようになると、自然と湧き上がってくる感情があります。それは、「誰かの役に立ちたい」「人を喜ばせたい」という思いです。
人間にとって最高の喜びとは何でしょうか? 美味しいものを食べること? 高級車に乗ること? 確かにそれらも喜びですが、一瞬で消えてしまいます。
持続的で、魂が震えるような喜び。それは、**「人の役に立ち、喜ばれた時」**にしか得られません。
私たちの会社、ティアの理念は「日本で一番『ありがとう』と言われる葬儀社になること」です。売上日本一でも、店舗数日本一でもありません。「ありがとう」の数で日本一を目指しています。なぜなら、それが社員にとっても、お客様にとっても、最高の幸せだからです。
葬儀という究極の悲しみの場で、ご遺族から涙ながらに「ティアさんにお願いして本当によかった。ありがとう」と言われた時、私たちの社員は震えるほどの感動を覚えます。「自分はこのために生まれてきたんだ」と実感します。
これは仕事に限りません。家庭でも、友人関係でも同じです。
「どうすれば、目の前の人が笑顔になるだろうか?」
「どうすれば、この人が少しでも楽になるだろうか?」
常にそう考え、行動することです。これを私は「与える生き方」と呼んでいます。見返りを求めず、ただ純粋に相手の喜びのために行動する。すると不思議なことに、出したエネルギーは何倍にもなって自分に返ってきます。
「情けは人の為ならず」という言葉がありますが、これは真理です。人を大切にする人は、人から大切にされます。人を助ける人は、困った時に必ず助けられます。これはオカルトではなく、人間社会の原理原則です。
自分のためだけに生きる人生は、孤独で貧しいものです。誰かのために生きる人生は、豊かで、温かく、力強いものです。
第五章:今、ここから始める
最後に、皆さんにどうしてもお伝えしたいことがあります。それは、「行動するなら、今しかない」ということです。
「いつか親孝行しよう」「いつか妻に感謝を伝えよう」「いつか夢を叶えよう」。
その「いつか」は、永遠に来ないかもしれません。
私は葬儀の現場で、たくさんの「手遅れ」を見てきました。亡くなった親の冷たい頬に触れながら、「一度でいいから、ありがとうと言えばよかった」と泣き崩れる息子さん。突然の事故で夫を亡くし、「行ってらっしゃい」さえ言えなかったことを悔やむ奥様。
死は、予告なくやってきます。
だからこそ、今日、この瞬間を大切にしてください。
今日家に帰ったら、一番身近な人に「ありがとう」と言ってください。照れくさいなら、メールでもいい。手紙でもいい。
喧嘩をしている人がいるなら、自分から頭を下げて謝ってください。許してください。
やりたいことがあるなら、今日、小さな一歩を踏み出してください。
人生で一番大事なこと。
それは、**「感謝の心を持ち、目の前の人を愛し、今この瞬間を全力で生き切る」**ことです。
私たちは、愛されるためではなく、愛するために生まれてきました。
何かを得るためではなく、何かを与えるために生まれてきました。
あなたが今日、誰かに投げかける笑顔が、その人の人生を救うかもしれません。
あなたが今日、口にする「ありがとう」が、誰かの生きる勇気になるかもしれません。
あなたの命は、それほどまでに影響力があり、尊いものなのです。
どうか、ご自身の命を安売りしないでください。
卑下しないでください。
あなたは、かけがえのない存在として、必要とされてこの世に生まれてきたのです。
人生は、山あり谷ありです。泣きたくなる夜もあるでしょう。
でも、朝は必ず来ます。冬は必ず春になります。
どんな時も、空を見上げ、生かされていることに感謝し、前を向いて歩いていってください。
私の話が、あなたの人生の羅針盤の一助となれば、これ以上の喜びはありません。
あなたという素晴らしい命に、心からの感謝とエールを送ります。
最後まで読んでくださり、本当に、本当に、ありがとうございました。
