かしこまりました。

私がこれまでの人生で掴み取った哲学、そしてこれからの人類が迎える未来を見据え、なぜ今「志」が全てなのか。私の魂の言葉として、深く、そして熱く語らせていただきます。

長くなりますが、どうか私の目を見て、心で聞いてください。


「志」高く ―― たった一回の人生をどう生きるか

孫 正義

人生とは何か。それは「時間」そのものです。

そして、その限られた時間を何に燃やすか。それが「志」です。

私がなぜここまで走ってこられたのか。多くの人は、私が才能に恵まれていたとか、運が良かったと言います。しかし、それは違います。私にあったのは、ただ一つ。「圧倒的に高い志」だけでした。

今日は、その本質について、3つの視点から深く掘り下げてお話しします。


第一章:夢と志の違い ――「自分」のためか、「人々」のためか

まず、勘違いしてはいけないことがあります。それは「夢」と「志」の決定的な違いです。

「美味しいものが食べたい」「大きな家に住みたい」「金持ちになりたい」。これは「夢」です。夢は、個人の欲望から始まります。それはそれで良い。否定はしません。しかし、夢は叶った瞬間に終わるか、あるいは困難にぶつかった時に、「まあ、これくらいでいいか」と妥協が生まれます。自分の欲望のためだけに、人は命を懸けることはできないからです。

一方で、「志」とは何か。

それは、「個人の欲望を超え、多くの人々のために命を使う」という覚悟です。

私が19歳の時、「人生50年計画」を立てました。

20代で名乗りを上げ、30代で軍資金を貯め、40代でひと勝負し、50代で事業を完成させ、60代で次の世代に引き継ぐ。

創業当時、私はアルバイトの社員2人を前に、みかん箱(リンゴ箱)の上に立ち、こう叫びました。

「我が社は5年後には売上10億、10年後には50億、いずれは豆腐のように1丁(兆)、2丁(兆)と数える会社になる!」

社員は呆れて辞めていきました。頭がおかしいと思ったのでしょう。当然です。金も実績も何もない男が、世界を見ているのですから。

しかし、私には見えていた。デジタル情報革命が、必ず人々を幸せにする未来が、鮮明なカラー映像として脳裏に見えていたのです。

「志」とは、未来からの逆算です。

現状の延長線上に目標を置くのではなく、遥か遠くにある「あるべき未来」に旗を立て、そこから現在へバックキャスティングする。その距離が遠ければ遠いほど、困難は大きくなりますが、同時に、それを乗り越えるための爆発的なエネルギーが生まれるのです。

第二章:死生観が生むエネルギー ―― 絶望の淵で掴んだもの

私がなぜ、これほどまでに焦り、走り続けるのか。

それは、20代半ばで経験した、死の恐怖があるからです。

創業間もない頃、私は慢性肝炎を患いました。当時は不治の病に近かった。医者には「あと5年生きられるかどうか」と宣告されました。

会社は急成長し始めていた。娘も生まれたばかりだった。これからという時に、私は病院のベッドで天井を見つめ、泣き続けました。「俺の人生は何だったんだ」「もっとやりたいことがあったのに」。

その時、私は坂本龍馬の本を読み返しました。龍馬は33歳で死にました。しかし、彼はその短い生涯で、日本という国の洗濯を成し遂げようとした。

私は自問しました。「仮にあと5年しか生きられないとして、それでもお前はやるのか?」と。

答えは「やる」でした。

命の長さは関係ない。どれだけ密度の濃い時間を生き、どれだけ多くの人を喜ばせることができたか。それが全てだと悟ったのです。

この「死生観」こそが、私の志の根源です。

人はいつか死ぬ。あなたも、私も、例外なく死にます。ならば、小さくまとまってどうするんですか。批判を恐れてどうするんですか。失敗を恥じてどうするんですか。

私がボーダフォンを買収した時、周囲は猛反対しました。「無謀だ」「会社が潰れる」と。しかし、私には見えていた。モバイルインターネットの時代が来ると。スティーブ・ジョブズとiPhoneの話をする前から、私はモバイルこそが次の革命の主戦場になると確信していた。

だから、全財産を投げ打ってでも勝負に出たのです。

志があれば、リスクはリスクではなくなります。それは「未来への投資」に変わるのです。

第三章:シンギュラリティの到来 ―― 人類史上最大の転換点に立って

そして今、私はかつてないほど興奮しています。

なぜなら、人類史上最大の革命、「シンギュラリティ(技術的特異点)」が目の前に迫っているからです。

AI(人工知能)は、これまでの道具とは次元が違います。蒸気機関も、電気も、インターネットも、筋肉の拡張や神経の拡張に過ぎなかった。しかし、AIは「知能」そのものの拡張です。

叡智を超えた叡智、スーパーインテリジェンスが誕生しようとしている。

この時代において、「志」を持たないことは罪です。

AIは強力なエンジンです。しかし、そのエンジンをどこに向けるかを決めるのは、私たち人間の「志」です。

「AIでどうやって儲けるか」などという小さな話ではありません。

この強大な力を使い、交通事故をゼロにする、不治の病をなくす、貧困を解決する、世界中の言語の壁を取り払う。

300年前の人々が魔法だと思ったことが、これからの30年で現実になるのです。

私は、ソフトバンクグループを「AI群戦略」で率い、この革命の指揮者になりたい。

私の志は、「情報革命で人々を幸せにする」。この一点に尽きます。

どんなにテクノロジーが進化しても、その中心にあるのは「人の悲しみを減らし、喜びを増やすこと」でなければならない。それが私の正義であり、哲学です。

結び:あなたへの提言

最後に、あなたに問いたい。

あなたの人生の物語のタイトルは何ですか?

その物語の主人公は、本当にあなた自身ですか?

誰かの期待に応えるだけの人生、常識という名の檻に閉じ込められた人生を送っていませんか。

そんなものは捨てなさい。

「自分の持てる能力の限界まで、世の中のために使い切りたい」

そう腹の底から思えるものを見つけてください。

まだ見つからないのなら、探し続けてください。妥協してはいけません。

そして見つけたら、常識外れと言われようが、ホラ吹きと言われようが、その旗を高く掲げてください。

志を高く持てば、最初は一人でも、必ず「同志」が集まります。

お金も、技術も、知恵も、後からついてきます。

私は孫正義です。

私はまだ何も成し遂げていないと思っています。私の夢は、まだまだこれからです。

あなたも、私と一緒に、世界を変えるような大きな夢を見ませんか。

たった一度の人生です。

どうか、志高く生きてください。